道に迷ったらどうすれば良いか?秋の紅葉登山(安達太良山)で気象遭難した話

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こんにちは、らくスノです。

今回は批判覚悟で、遭難に陥った経緯をお話したいと思います。

あらためて文章にすると後悔と自分の馬鹿さ加減に嫌気が差しますが、長年登山をしていてもやはりこういうトラブルには巻き込まれてしまうわけです。

登山で遭難すると、必ず「自己責任」という言葉が踊りますが、今回は自分自身の責任を痛感せざるを得ませんでした。

でも、当時の自分の心理や失敗、生還に至った経緯をお話すれば登山者の皆さんのお役に立てると思い、あえてブログ記事にした次第です。

では、次項より遭難に至った経緯をお話したいと思います。

紅葉目当で10月初旬の安達太良山へ

私は20代の頃から登山が趣味で、季節を問わず様々な山に登りました。

その日は、妻と子どもが出かけることになっていたので、これ幸いと単独登山の計画を立てました。10月初旬の安達太良山(あだたらやま)は木々も色付き始め紅葉狩りにはぴったり。

安達太良山(あだたらやま)は福島県中部にある活火山である。日本百名山、新日本百名山、花の百名山およびうつくしま百名山に選定されている。

引用:ウィキペディアより

しかし、ひとつだけ心配事がありました。それは台風の進路です。

前日の予報では、安達太良山のある二本松市の直撃はないとの話たっだので、よくコンディションを調べもせずに安易に登山を決行してしまいました。

これが、今回の登山で私が犯した最初のミスです。

台風がそれたとはいえ風などの影響はあるわけで、ましてや山の天気は街の予報などあてになりません。

台風が付近を通過するという時点で、この計画は中止にすべきだったと思います。

風は強いものの天気は良かった

さて、前日の深夜から出発した私は、翌朝の4時頃あだたらスキー場に到着しました。

当日は、風は強いものの登山口のある「あだたらスキー場」は晴れ。

そもそも、安達太良山は標高1700m、日本百名山にも選定されるほど有名な山ですが難易度はそれほど高くありません。

当日の行動予定

5:00あだたら高原スキー場出発→6:30薬師岳(中間地点)→8:00安達太良山頂上→10:00くろがね小屋→12:00あだたら高原スキー場到着

当日は、往路と復路の道が異なる、登山用語では「周回」とか「ループ」と呼ばれる行程を組みました。行動予定をご覧いただければわかる通り、日帰りどころかお昼には戻って来れるくらいのスケジュール。(ちなみに、この日は強風のためリフト運行は中止。)

2つ目のミスが、まさにこの「山を舐めていた」ことでした。

低難易度で山頂までの到達時間も短い、冬山や槍・穂高の経験もある私は、初めて登る山にも関わらず「安達太良山なんて簡単に登頂できる」と舐めていたのです。

当日の装備
  • サングラス
  • タオル
  • ティッシュ
  • ハードシェル
  • レインウェア(上下)
  • グローブ
  • 食料(サンドイッチ、おにぎり、柿の種、グミ)
  • トレッキングポール
  • 山と高原地図、コンパス
  • 水1ℓ
  • エマージェンシーキット(絆創膏、包帯、消毒液等)

当然、低山と舐めていたので装備も完璧ではありませんでした。特にラジオやツエルト・ライトを持参しなかったのは致命的でしたね。※ツエルトとは、野営用の簡易テントのことです。

これについては、本当に猛省しなければなりません。

薬師岳はすでに立っていられないほど

時刻は5時、山頂はガスっているもののゲレンデは晴れ。まずは中間地点の薬師岳に向かいます。

時々強風は吹くものの、木々が自然の防風林となっていることもあって体感的にはそれほどでもありません。

気が付けば、ほぼ予定通り6:20に薬師岳頂上へ到着しました。しかし、ここで最初のトラブルに見舞われます。

遮蔽物のない薬師岳の頂上では、ものすごい強風が吹き荒れていたのです。

体感ですが、風速で15~20mほど。立っていると身体が煽られバランスを崩すくらいの風圧でした。

出典:ウェザーニュース

台風で人が立っていられないのは風速20m以上と言いますが、この時点で頂上の状況を予想し引き返すべきでした。

しかし、この時は強風が吹き荒れたいたものの雨は降っておらず、「ダメだったら引き返そう」と安易な気持ちで頂上へ向かってしまったのです。

【当時の映像】

頂上直下で誘惑に負ける

この記事をご覧になって「コンディションも考えずに登るんて馬鹿だなぁ」と思いますよね。

しかし、中には「荒天だけど、せっかく来たんだから行けるとこまで行こう!」なんて考えたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

この時の私がまさに同じ状況で、危機意識よりも「せっかく来たんだから」という思いが強くなってしまいました。

結局、危険よりも誘惑が勝ってしまい、薬師岳から1時間10分ほどで到達する山頂を目指して進んでしまいます。

途中から雨が降り、風も一段と強くなってきましたが、幸か不幸か山の木々が風雨を防いでいたのです。

頂上直下までは、それほど風雨の影響を受けることなく進むことができたのですが、ここで景色が一変します。

遮るもの(木々)がなくなった途端、強烈な風雨が私を襲いました。もうすでに、石や木の枝に掴まっていないと立っていられないほど。

台風では人が立っていられないのは風速30m以上ですので、まさにそのくらいの暴風雨が吹き荒れていました。

そして、今思えばこれが引き返す最後のチャンスでした。しかし、ここでもありえない決断をしてしまったのです。

「乳首と呼ばれる頂(いただき)だけでも見て帰ろう」

登山道を見失う

時刻は7:30。すでに視界は0m、這うように安達太良山の頂「乳首」を目指します。そして、意外にあっさりとその「乳首」を拝むことができたのです。

「慎重に進んだから問題なかったな!」

しかし、この時すでに登山道を見失っていることに気がついていませんでした。

当たり前ですが、頂上を目指すのは簡単です。方向さえ間違えずにひたすら登っていればいつかは頂点に着くわけですから。

問題は下山。あたりを見渡しても道らしきものはありません。この時、初めて自分が犯したミスの重大さに気づいたのです。

「うわ、やばい。道を見失った…どうしよう…」

この時の選択肢は2つ、皆さんならどういった行動をとりますか。

①来た道を探して下山する?(約2時間)

②このまま進んでくろがね小屋に避難する?(約45分)

状況にもよりますが、この場合は知らない道を歩くより多少歩行距離が長くても①来た道に戻るべきでした。

でも、私はあろうことか、今まで通ったことのないくろがね小屋に進路をとってしまったのです。

【当時の映像】

※この時は、まだ道に迷ったことに気づいていません。

峰の辻で遭難

その後、方角だけを頼りに、頂上とくろがね小屋の中間地点「峰の辻」を目指します。そして、峰の辻の分岐にはなんとかたどり着きました。

しかし、視界ゼロではここが限界。「登山道を下れば視界も開けて道が分かるだろう」と、なんの根拠もなくくろがね小屋を目指したのは良かったのですが、しばらく進んでもそこには砕石と呼ばれる岩に囲まれた広場があるだけでした。

いや、広場かどうかはわかりません。視界が無い中では、無限に広がる場所に感じられたのです。

そのうち登山道も峰の辻の目印も分からなくなり、心の中ではさんざん否定していましたが、さすがに「遭難した」という事実を受け止めるしかありませんでした。

周りは遮るものが何一つない広場。

そこにいるのは自分だけ。

風と雨で凍えるくらいの寒さ。

人間、死に直面するとどうなると思いますか?

私は恐怖で全身が震えました。もちろん、寒さとは別の震えです。気象遭難で亡くなった方ってみんなこんな感じになるのでしょうか。

また、こういった時は家族のことを思い出すなんて言いますが、私の場合は違いました。ひたすらここまで来たことを後悔してましたね。

ハイマツでビバーク

このまま、暴風雨にさらされたままだと体力を消耗するだけなので、とりあえず手近なハイマツに仰向けで隠れます。しかし、ビバークといってもハイマツに隠れているだけなので、体半分は風雨にさらされていました。

ハイマツとは

樹高1-2mのことが多い小型種。ただし、その樹形は名前のごとく地を這う独特のもので、日本の他のマツの仲間にはほとんど例を見ない。高山の稜線上などでは文字通り、地面を這うような低い樹形。

引用:ウィキペディアより

鼓動は高鳴っていますがとりあえず冷静になろうと思い、声に出して「落ち着け!」「大丈夫だ!」と連呼しました。

「救助を要請しよう!」

もう、人に迷惑をかけたくないとかきれい事は言ってられない。ここは素直に救助を要請しよう。濡れた手を衣服で拭い、ザックからスマホを取り出します。

しかし、あろうことか携帯は圏外。救助を呼ぶことはできません。もはや、生還するには自己解決するしかありませんでした。

20分?30分?どのくらいの時が経過したのか…すでに時間なんて気にする余裕はなくなっていましたが、なるべく冷静になって今取るべき行動を考えてみたのです。

①周りに登山道がないか探してみる。

②とにかく下って、くろがね小屋を目指す。

③このまま風雨が止むまで待機。

④再度、頂上を目指す。

みなさんなら、ここでどんな行動を取るでしょうか。

まず、③の案はすぐに消えました。ハイマツに隠れていても、ツエルトも無い状態でこのまま風雨にさらされ続ければ低体温症で死を待つだけ。せめて天候が回復すれば地図とコンパスで元の道に戻る自信はありましたが、そもそも風雨が止む保証などありません。

そして、登山経験の無い方でしたら、おそらく①②を選ぶのではないかと思います。確かに、暴風雨の中、再度頂上を目指すの④は一番リスクがあるように感じますよね。

しかし、結論としては私は④を選びました。

結果、この選択がギリギリのところで生還につながるきっかけになりました。

遭難したら頂上を目指す

登山初心者の方も、ぜひこれだけは覚えておいてください。

「遭難したら、頂上を目指す。」

もちろん、動くだけの体力が残っていればの話です。確かに、この状況で頂上を目指すのはとてもリスキーに感じますが、実はすでに前項でヒントは出ていました。

「ひたすら登って行けばいつかは頂点に着く。」

そうなんです、頂上は1点しかありません。頂点を目指して進んで行けば誰かに発見されたり登山道を発見する可能性も高まるわけです。

逆に、遭難死した方は沢で見つかるパターンが非常に多い。これは、山を降りてしまったがために途中で体力が尽きてしまったんでしょう。

しかし、頂上付近はさらに暴風雨が吹き荒れています。私も最初は躊躇しましたが「もはや、自分が生き残る道はこれしかない」と最後の力を振り絞って頂上を目指しました。

地面を這うように、一歩一歩慎重に前へ進みました。もし、風にあおられて転落や骨折でもしたら、今度こそ命はありません。

途中暴風で吹き飛ばされ、持っていたトレッキングポールが真っ二つに折れました。でも、なんの根拠もありませんが「トレッキングポールが身体を守ってくれたのかな?」なんて考えると、少し元気が出てきました。こんな時は、なんでもポジティブに考えることが大事です。

そして、ついに登山道の目印であるペンキを発見したのです。

薬師岳への道

やっとの思いで登山道を発見した私は、今度こそ迷わないように慎重に歩みを進めます。そして、ついに頂上直下まで到達したのです。

今度は往路で通った道へ戻ります。生還への道筋が開け安堵しましたが、暴風雨は収まる様子がありません。ここでも道を外さないように、ゆっくり下山していきます。

時刻は午前11:00、中間地点の薬師岳に到着しました。

風はまだ強いものの雨は降っておらず、さっきまでの暴風雨が嘘のように穏やかに感じます。

ここで、やっと登山者と遭遇しました。下山時に初めて会った登山者は家族連れ、中学生くらいのお子さんもいらしたので、私は全力で下山を勧めました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

タイトルは気象遭難としましたが、これはまさしく人災だと思います。それくらい自分の甘さを痛感した山行でした。

かつてトムラウシ遭難事故という気象遭難がありましたが、私も同じ心理状態で遭難してしまったのです。

トムラウシ遭難事故とは

2009年7月16日早朝から夕方にかけて北海道大雪山系トムラウシ山が悪天候に見舞われ、ツアーガイドを含む登山者8名が低体温症で死亡した事故。夏山の山岳遭難事故としては近年まれにみる数の死者を出した惨事となった。

引用:ウィキペディア

【今回遭難した原因】

  • 台風がそれたとはいえ、その影響を考慮していなかった。
  • 自分の登山経験を過信し、「低山だから」と山を舐めていた。
  • 天候が悪化した時点で引き返すべきだったが、「せっかく来たんだから」と登山を続けてしまった。
  • 来た道を戻らず、安易に山小屋を目指して進んでしまった。

【生還できた理由】

  • 「落ち着け!」「大丈夫だ!」と声に出し続けた。
  • 一度、ハイマツでビバークして冷静になれた。
  • 無理に下山せず頂上を目指して進んだ。
  • 「地図読み」や「遭難時の行動」に対する知識を有していた。

遭難までの行動は批判に値するものですが、それからの行動は今振り返っても冷静な判断だったなと思います。

今回は「本当に馬鹿な行動をしてしまったな…」と猛省しておりますが、この経験がご覧頂いている登山者の方の安全に役立てば幸いです。


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ABOUTこの記事をかいた人

東京在住、元スノーボードインストラクターという一風変わった肩書きを持つ35歳のサラリーマンで、子育てと父親のあり方について考える子育てプロデューサー。 独身時代から多趣味なことが災いし、子どもが生まれたあともしばらくは自分中心の生活を続けていましたが、ある出来事をきっかけに改心して、今では娘と過ごす時間を一番に考え充実した毎日を過ごしています。